| 中国63号の特記すべき特徴 |
| 生育日数が南栄なみに短くて,そのわりに収量性が高く,耐肥性もあるので,やさいや飼料作物などと組合わせた水田高度利用における水稲短期栽培用品種として適し,品質,食味もよい。 |
| 奨励品種に採用しようとする理由 |
| 静岡県では近年やさい類の水田への導入作付が増大し,生産物の周年供給を目的とした各種の作型がとられている。これらやさい作の生産安定化と作業,労力配分の適正化のためには,水稲と組合わせた合理的作付体系の確立が必要とされる。とくに最近,施設利用等により,年内から出荷可能の促成のイチゴやレタスなどの作付が増加の傾向にあり,これらは9月中旬には定植の必要があるため,前作水稲の収穫はおそくとも9月上旬までであることが要求される。
一方,県内平坦部における水利慣行から水稲の早植化は困難な事情にあるほか,早植ではウイルス病の多発もみられるなどにより,一般には水稲の本田移植は6月上~中旬に行なわれる。その結果,従来県内でもっとも早熟のトネワセ・スルガワセでも収穫は9月中~下旬となって,上記の促成やさいの定植には極めて不都合となる。 したかって,やさい作を重点とする経営では,前作水稲の作付を放棄する場合が多く,その結果最近になって,やさいの連作による諸障害が多発し,生産を著しく不安定にしている。そこで,水稲の6月田植で,8月末~9月上旬に収穫できる短期栽培の導入が望まれているが,従来このための適品種が皆無の状態であり,新品種の開発導入の要望が非常に強い。 中国63号は,生育日数が短く,移植後100日以下で収穫可能であり,しかもやさい跡の多肥条件に耐え,生育日数の短い割には収量性もあって上記の栽培型によく適合し,品質・食味も良好であることから,県内平坦部における「水稲十やさい」作経営の安定合理化と収益増大に著しく貢献するものと考え,スルガワセにかえて奨励普及したい。 |
| 普及見込み地帯 |
| 県下一円の平坦地 |
| 来歴 |
| 「中国63号」は,昭和40年農林省中国農業試験場において,「Rl51」を母とし,「〔(ふ系71号×ふ糸67号)F1 ×コシヒカリBl〕F4」を父として人工交配を行ない,同年9月から昭和42年3月まで温室内で世代促進栽培により集団を養成し,自然日長下で出穂性についてとう汰を加えながらFl~F5を経過させた。昭和42年F6では穂別系統として普通期に栽植し,昭和43年には早期および晩期栽培を行なって,それぞれの作期適性についてとう汰を加えながら系統選抜を行ない,昭和44年F8以降は系統育種法によって選抜固定をはかってきた。この間昭和44年から「短期系15」の名で,4月から7月にわたる播種時期別の短期栽培生産力検定試験に供試するとともに,昭和46年以降は1部関係県において短期栽培用品種としての適性の検討を行なった結果が有望と認められたので,昭和48年から「中国63号」の系統名を付し,関係府県に配布して地方適否を確かめてきたものである。昭
和52年度で雑種第16代にあたる。 |
| 形態的特性 |
| 稈長はコシヒカリより15~20cm短く,レイメイよりもやや短い短稈で,穂長,穂数はコシヒカリ程度あり,草型は中間型に属する。通常は無芒であるが,ごく稀に短芒を生ずることがある。ふ先色は白,粒着は中~やや密で,脱粒性は難の粳種である。玄米の粒形は中長,粒大は中で,心白・腹白は少なく,粒の光沢もよく,外観の品質はコシヒカリと同程度によい。
搗精時間は比較的短く,糠の剥離が容易であり,搗精歩留りはコシヒカリよりわずかに劣るが,大差はなく高い方である。食味はレイメイより明らかにまさり,コシヒカリとほとんど差がなく美味である。 |
| 生態的特性 |
| 出穂期は早期・普通期栽培では南栄より3~5日晩いが,晩期栽培では同程度で,レイメイ・コシヒカリにくらべ,各作期を通じ10日~20日くらい早熟の短期種である。温暖地平坦部における移植栽培では,4~5月植では本田日数が100日前後であるが,6月植では出穂まで日数の短縮により本田日数は80~90日となり,7月植では出穂まで日数はより短縮されるが登熟日数が長くなるため,本田日数は90日をこえることがある。
いもち病に対し真性抵抗性遺伝子pi-aとpi-zをもつと推定され,圃場抵抗性はやや劣るが,ふつうのいもち病菌には極めて強く,一般には発病することは稀である。白葉枯病,縞葉枯病など他の病害に対しては一般極早生種と同程度で強くない。イネカラバエ耐虫性は特性検定試験の結果ではやや強であるが,場所によって被害のめだつことがある。耐倒伏性は十分ではないがコシヒカリにはまさり,短稈であるため肥沃地やかなりの多肥条件下の栽培でもよく耐える。穂発芽性はコシヒカリにはやや劣るが難に属する。耐冷性は劣り,とくに障害型冷害に弱く,不稔籾を多発することがある。 収量性はレイメイ・コシヒカリなど一般極早生種には劣るが,ほぼ同熟期の南栄にはまさり生育日数の短い割には生産力が高い。 |
| 静岡県で奨励品種に採用しようとする理由 |
| 県内平坦部やさい作地帯で,9月中旬定植の促成イチゴやレタスなどの前作水稲に適品種がなく,水稲作をしないためにやさいの連作障害が起っている。この問題を解消し,やさいの生産安定と経営の合理化をはかるために必要な水稲短期栽培用品種として本系統が好適すると認め,採用普及したい。 |
| 配付しうる種子量 |
| 系 統 採 種 3.5kg
系 統 群 採 種 14.5kg 普 通 採 種 38.0kg (合 計 56.0kg) |
| 栽培適地 |
| 「中国63号」は,東海以西の温暖地平坦部で,やさいや飼料作物などとり入れた水田高度利用の場における水稲短期栽培用品種として適す。熟期的には一応早期作から晩期作までの作付は可能であるが,作期別の生産効率と生育・収量の安定性からみれば,普通期栽培(6月植)で,8月未~9月上旬に収穫して,後作に促成やさいなどの導入を可能ならしめるような作型に最も適すると思われる。その反面,米の絶対収量の多いことが望まれる一般栽培には不向であり,また障害型冷害に弱いので,そのおそれのある地帯には適さない。 |
| 栽培上の注意 |
| 1,品種選択に当り耐冷性が劣ることに留意する。温暖地平坦部でも早期栽培では生育中に低温に遭遇すると不稔籾を多発することがあるので注意を要する。
2,短期種であり,育苗期間が長くなると不時出穂のおそれがあるので,原則として稚苗移植栽培,または直播栽培が望ましい。 3,生育日数がごく短いことに留意し,収量性を高めるには生育初期から適切な肥培管理が行なわれるよう計画を立てることが大切である。また前作のちっ素残量の多少により施肥の量,時期を調節する必要がある。 4,生育が早いことと短稈であることから,高温下生育時に紋枯病の発生し易い場所では被害の進行が早いので,このような場所ではあらかじめ適期の薬剤防除が大切である。 5,ふつうのいもち病菌にはごく強いが,特殊のいもち病菌(N1-Z群)には侵されるので,その発生には注意し,病徴を認めたら適期防除を十分に行なう。 6,高温時の収穫では,過熱により品質低下を来さないよう,適期刈りを励行する。 |