来歴
 「越南12号」は農林省農事試験場鴻巣試験地において昭和16年「近畿34号」(農林22号)を母とし「近畿33号」を父として人工交配を行い昭和19年にその雑種第3代種子を新潟県立農事試験場における農林省指定水稲新品種育成試験地で配付を受け昭和22年より農林省長岡農事改良実験所で選抜固定を計り、更に昭和25年にその雑種第9代種子を農林省福井農事改良実験所で配付を受け、昭和26年に福井県立農事試験場における農林省指定水稲新品種育成試験に移管と同時「越南12号」の系統名を付し関係府県その他に配付し地方的適否を検討中のもので、京都府においては昭和30年度より準奨励品種に、福井県において31年度より奨励品種に採用する事になった。昭和31年度にF15である。
 選抜経過及び育成系統図は次の通りである。


特性概要
 「越南12号」は農林32号より僅かに出穂期の早い中生の早に属する粳種で草状は農林22号に類似し農林32号に比し長稈で稍々少蘖の中間ないし穂重型で熟色は比較的淡く葉幅は広くて、且つ葉自身は長くて割合直立する。
穂長は農林32号より稍々短く、且つ粒着も若干疎であるが千粒重は重く農林22号程度の白芒を有する。
倒伏に対する抵抗性は農林22号に似て弱い。葉いもち並び首いもち病に対する抵抗性は農林22号、山陰17号より僅かに劣る様であるが農林32号、農林29号よりは遥かに強く、胡麻葉枯病、紋枯病についても中強であるが、白葉枯病、小粒菌核病に対する抵抗性は普通である。稈が太いため二化螟虫の被害を受けやすいが稈蝿については強い方である。苗代日数感応度は鈍感であるが感応性並びに感光性については共に中程度と思われる。
成熟期における熟色は良好で概して少肥、密植及び晩植栽培において生産力が高く肥沃田及び多肥区では倒伏による減損が多い。
粒型は長く粒大は中の大であるが稍々厚みが足らない様で品質は農林32号より良好で精白歩合も高く、食味も良好である。
以上の諸特性により南北陸並びに北山陰地方の平坦部及び中山間部における肥沃中庸以下の乾田地帯、秋落地帯及び裏作跡の晩植用に適するものと思われる。


福井県において奨励品種に採用する理由
(a)山陰17号の主要栽培地帯は、若狭平坦、嶺北老朽化水田、同乾田晩植地帯、大野平坦及び県下の山間地帯であって、これらの地帯では従来安定  品種として高い評価を買われて来たが、一面収量の飛躍性に乏しいので、少なくとも同程度の耐病性を持ちながら更に収量性の高い品種の育成が期待されていたが、これに答え得る品種がここ数年育成されなかったので、耐病性の強い品種でなければならない。前記の地帯に農林32号や東山38号、福井銀坊主等の様に収量性は高いが耐病性の劣る品種が栽培されて、これらの地帯の稲作作柄の不安定の一原因をなしていた。
越南12号は農事試験場における5ヶ年の収量並び特性検定試験の結果、山陰17号に比し多収量を示すと共に前記の諸品種に比べて耐病性もかなり高く山陰17号に近い抵抗性を具えていると判定された。さらに現地試験の結果は耐病性並び収量性において山陰17号や農林32号に比べ同等又はそれ以上の結果を得てしかも品質が良好なので試作者の好評を得た。
従って越南12号は山陰17号の多収化をねらうと共に農林32号、東山37号の一部を代替する事によって前記の諸地帯の反当収量を増加せしめると共に作柄安定に寄与する処が大きいと考えられる。
(b)福井県における栽培状況
  昭和30年度 11町1反
(c)適地及び普及見込
  適地 特性及び試作成績並び既存品種の分布状態より勘案し、本品種の適地は、若狭平坦、南越老朽化水田、福井平坦乾田地耐、大野平坦及び県下の中山間地帯の普通栽培並びに県下全般の晩植栽培に適する。


  対照品種及び普及見込面積
   今後本品種によって代替しようとする品種は次の如きものと考える。
   山陰17号  3000町歩のうち 1500町歩
   農林32号  1870町歩のうち  700町歩
   東山37号   547町歩のうち  300町歩
   福井銀坊主  800町歩のうち  400町歩
   農林10号               100町歩
   その他                200町歩
    計                 3500町歩
(d)種子の準備
  昭和30年度 配付予定種子量        3石
  昭和31年度 栽培予定採種圃原種圃面積 16反


島根県において越南12号を奨励せんとする理由
(i)農林10号は偏穂重型の早生粳種で良質、多収、稈も比較的丈夫であり、早植適応性が高く、又冷水抵抗性も中位であるので、昭和12年本県奨励品種に編入以来平坦部の早生として山間部の中生種として広く普及し、昭和19年2683町歩(56%)にも及び特に山間部中生の王座を占めていた。しかしながら反面稲熱病(葉穂頚共)耐病性、稈蝿耐虫性が低い上に螟虫被害も比較的大なるためその栽培面積も漸減し、昭和30年には約1,100町歩となりこれに代るべき品種が強く要望されて来た。
(ii)越南12号は特性概要にも述べた如く、出穂、成熟期は全く農林10号に類似し、草性も類似するも僅かに長稈の穂重型品種で倒伏、胡麻葉枯病、白葉枯病、紋枯病の点では僅かに劣るが良質多収であると共に稲熱病、稈蝿、冷水抵抗性及び早植適応性共に優り山間部では明らかに農林10号に代り得るのは勿論、さらに同熟期の品種の普及面積を蚕食し得る。平坦部においても現地試験の結果は多収を得たが肥沃田では耐病性の点では差したる問題はないが倒伏に難点がある。
 (a)適地
  山間部一円に好適し、中山間平坦部においては肥沃田、多肥栽培を避け地力中庸以下の地方に適すると考える。
 (b)普及見込面積
  置換対照品種  昭和30年現在作付面積   普及見込面積
  農林10号           1,128町歩       500
  近畿33号           2,827          300
  農林?号             173          100
  タカネ              9,759         1,000
  その他(同熟期のもの)     200          100
   計                           2,000
 (c)種子
  昭和30年度より原々種の系統栽培を行い原々種採種を行うと共に原種採種を行い、1石1斗5升保有す。
 (d)現在の栽培状況
  現地試験の周辺において栽培し好成績を収めているが面積は未だ僅少である。


配付しうる種子量
6斗


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