| 越南96号の特記すべき特徴 |
| 「ホウネンワセ」に比し耐倒伏性,いもち病抵抗性,収量性が優る。早生としてはやや大粒で食味は「コシヒカリ」「ササニシキ」程度で極く良い。 |
| 奨励品種に採用しようとする理由 |
| 福井県では昭和46年度に中山間および山沿い地帯のいもち病に強い機械化適応,多収品種として「セイレイ」を奨励品種に採用したが,穂発芽性ごく易で,品質が劣るため関西市場の不評をかい昭和48年度の188haを最高作付面積として漸減してきている。このため産米改良の基幹品種である「ホウネンワセ」や「こしにしき」がこれら不適地に作付され,昭和51年度はいもち病とくに穂いもち病の被害をうける等いろいろの障害のため,玄米品質の低下することが多く産米改良上大きな支障をきたしている。
「ホウネンワセ」は小粒のため最近は関西市場の評価が悪く,作付面積が減少し昭和52年度5.600ha,53年度は2,000ha程度に激減することが予想される。「こしにしき」は昭和49年度より平坦肥沃地むきの奨励品種に採用され,粒がやや大きく関西市場むきの品種として作付の伸びが大きい。収量性は「ホウネンワセ」に優らないが良質で検査等級で上位等級米比率が昭和50年99.5%,51年92.9%と高いこともあって計画を上廻って作付され,昭和51年度で7,800haに達し52年度は10,000haを超えることが予想される。しかし「こしにしき」はいもち病とくに穂いもち病に弱く食味も「ホウネンワセ」を上廻らないため,不適地の作付が伸びると市場評価を落す原因となるので,好適地の7,000~8,000haに作付を抑える必要がある。 つぎに,嶺南地方は従来から低収地帯として知られ老朽化水田,湿田も多く,冷水の被害も少なくない。また,海沿い地帯の水田として成熟期には強風による倒伏が多く「ホウネンワセ」の倒伏は収穫の機械化をはばみ,産米改良上も好ましくない。 「越南96号」は「セイレイ」に比し生産力はとくに優らないが穂発芽少なく「ホウネンワセ」「こしにしき」に比し多収で倒伏といもち病抵抗性,耐冷性が優れ,品質は「ホウネンワセ」程度かやや劣るが,早生としてはやや大粒で食味がとくに良いので中山間ならびに山沿い地帯における安定良食味品種としてこの地帯の「ホウネンワセ」その他早生の雑品種に代え奨励品種に採用したい。 |
| 普及見込み地帯 |
| 嶺北の平担地を除く山沿いおよび中山間地帯,ならびに嶺南の中山間地帯。 |
| 育成経過 |
| 「越南96号」は昭和37年,福井県農業試験場(農林省指定試験地)において,「コシヒカリ」を母とし「奥羽245号」(後のフクニシキ)を父として人工交配を行い,以来同場で系統育種法により選抜固定をはかり,昭和45年度より「越南96号」の系統名をつけて,関係府県に配布し地方的適否をたしかめてきたもので,昭和52年度で雑種第15代である。 |
| 形態的特性 |
| 移植時の苗丈は「ホウネンワセ」程度でやや長く,葉色濃く葉巾やや広めで葉身は比較的直立する。苗代日数感応度は「ホウネンワセ」「トドロキワセ」「ササニシキ」に比し低い。分けつ期の草丈は「ホウネンワセ」「セイレイ」に比し短かく「ササニシキ」程度で葉身はかなり直立し草状は良いが分けつ力は「ホウネンワセ」に比しやや劣る。
稈長は「ホウネンワセ」に比し5~6cm短かく「セイレイ」程度か僅かに短かい程度で穂長は「ホウネンワセ」よりやや長く穂相は「フクニシキ」に類似する。穂数は「ホウネンワセ」に比しやや少なく「セイレイ」程度の中稈,偏穂数型である。 葉色は「ホウネンワセ」に比しやや淡く,葉巾広く止葉が立ち,やや枯上るが「ホウネンワセ」より少なく熟色は良い。着粒は中位でまれに短芒を生じ,ふ先色は白く脱粒性は難である。 玄米の粒形はやや長めで,「フクニシキ」に類似し千粒重は「ホウネンワセ」「セイレイ」「ササニシキ」「トヨニシキ」より重く「こしにしき」程度で早生としてはやや大粒である。玄米品質は「トドロキワセ」「セイレイ」に優り,「ホウネンワセ」程度であるが年により腹白を生じやすく,また光沢が劣り低下する傾向がある。搗精歩合は「ホウネンワセ」「セイレイ」「ササニシキ」よりやや高く,胚芽脱落性もこれらの品種より落ちやすいようで搗精時間も比較的早い。 食味は「ホウネンワセ」「セイレイ」「こしにしき」等に明らかに優り「ササニシキ」「コシヒカリ」に匹敵する。 |
| 生態的特性 |
| 出穂ならびに成熟期は「ホウネンワセ」と同程度で「セイレイ」に比し僅かに早い育成地では早生に属する粳種である。稈の太さは「トヨニシキ」程度で耐倒伏性は「トヨニシキ」に比し僅かに劣るが「ホウネンワセ」より明らかに強く「トドロキワセ」程度か僅かに優る。
いもち病抵抗性遺伝子はPi-Zをもつと推定され葉・穂いもち病ともに「ホウネンワセ」「こしにしき」「トヨニシキ」「トドロキワセ」等より強い 圃場抵抗性は中程度と推定される。白葉枯病抵抗性は「ホウネンワセ」「セイレイ」より弱く「ササニシキ」よりやや弱い弱に属する。カラバエ耐虫性は「ホウネンワセ」より弱いが「トドロキワセ」「ササニシキ」「トヨニシキ」程度で中ないしやや強とみられる。枯上りやや多く紋枯病にやや弱いが「ホウネンワセ」より少ない。 耐冷性は「ヨネシロ」より弱いが「ホウネソワセ」「セイレイ」より強く中ないしやや強とみられる。穂発芽性は「ホウネンワセ」「トドロキワセ」よりしやすいが「トヨニシキ」「セイレイ」「ササニシキ」より難で中に属する。 収量性は「セイレイ」「トヨニシキ」に比し優らないが「ホウネンワセ」「こしにしき」に比し高く多肥による増収効果も認められる。 |
| 福井県で奨励品種に採用する理由 |
| 関西市場で評価の劣る「ホウネンワセ」に代えて,山沿いならびに中山間地帯の安定,良食味品種として普及を図る。 |
| 配付しうる種子量 |
| 系統群採種 7.0kg
普通採種 46.5kg 計 53.5kg |
| 適地および奨励品種採用予定県 |
| 1)適地
北陸南部における山沿いならびに中山間地帯の安定、ごく艮食味品種として好適するのでこの地帯の「ホウネソワセ」に代えて普及をはかる。 2)奨励品種採用予定県 福井県 普及見込面積 5,000ha |
| 栽培上の注意 |
| 1)分けつ力があまり強くないので基肥をやや多めにし、根付け肥えを施すとともに疎値にならぬようにし、穂数の早期確保につとめる。
2)8月の日照時数の少ない年は光沢が劣り、品質低下の原因となるので過繁茂にならない程度に晩期追肥を施し、枯上りの防止をはかる。 3)一般にはいもち病にごく強いが特殊ないもち病菌系に対しては抵抗性が充分でないので、その発生に充分注意し適期防除を確実に行う。 4)穂発芽性は「セイレイ」に比すれば低いが、中程度であるので刈りおくれにならないように注意する。 5)白葉枯病、紋枯病に弱いので防除に留意する。 6)耐冷性は「ホウネンワセ」にやや優るが充分とはいえないので山間高冷地には不適である。 |