越南114号の特記すべき特徴
 草姿良く,熟色良好で品質,食味は「日本晴」「ヤマホウシ」に優る。また,「日本晴」「ヤマホウシ」に比し,いもち病抵抗性が強い。


奨励品種に採用しようとする理由
 中山間地帯の良質,強稈,多収品種として奨励品種に採用された「ヤマホウシ」は品質が良く,仕分け品種あるいは特例銘柄品種に指定されたこともあって計画を上廻って作付され不適地での伸びが大きい。
 しかし,「ヤマホウシ」はいもち病に弱いため最近作付面積の伸びは頭打ちとなり適地でも減少の傾向にある。「日本晴」はごま葉枯病に弱く秋落地帯に不適でいもち病に弱い。また基盤整備水田では赤枯病が多発し収量があがらない。
 従って,中山間地帯むきのいもち病耐病品種にたいする農家,普及,行政からの要望が強い。
 「越南114号」は中山間地帯(標高300~500m)の中生種として「ヤマホウシ」「日本晴」に比し,いもち病抵抗性が強く,品質,食味も優れ収量が安定して高い。また,「ヤマホウシ」に比し強稈であるので中山間ならびに山沿い地帯の良質安定品種として奨励品種に採用したい。


普及見込み地帯
 中山間および平坦の山沿い地帯


育成経過
 「越南114号」は昭和39年,福井県農業試験場(農林省指定試験地)において「中国26号」(後のサトミノリ)を母とし「コシヒカリ」を父として人工交配を行ない。F2,F3を岡山県川上村の現地選抜圃で集団栽培した後,同場で系統育種法により選抜固定をはかり昭和49年度より「越南114号」の系統名をつけて関係府県に配布し地方的適否をたしかめてきたもので昭和52年度で雑種第13代である。


形態的特性
 苗丈は「日本晴」に比しやや低く「キンパ」程度の中長である。葉色および葉巾は中位で葉身はやや垂れ気味であり,初期伸長性は「秋晴」に類似する。
 分けつ期の草丈は「キンパ」よりやや長く「日本晴」程度で葉色やや濃く葉巾中位で葉身は直立し草状は良い。
 稈長は「日本晴」に比しやや長いが「ヤマホウシ」「秋晴」より短かく「キンパ」程度か僅かに短い。穂長は「日本晴」「ヤマホウシ」「秋晴」より短かく「キンパ」程度で穂数は「ヤマホウシ」に比しやや多いが「キンパ」「日本晴」「秋晴」よりやや少ない,やや長稈,中穂の偏穂数型である。葉色は「キンパ」程度で「日本晴」よりやや濃く止葉が直立し熟色はやや赤味をおびるが良好である。粒着は中位で,ごく稀に短芒を生じふ先色は白く脱粒性は難である。
 玄米の粒形は「日本晴」に比し僅かに短かく,やや厚みのある僅かに丸味を帯びた中粒で,千粒重は「キンパ」「ヤマホウシ」「秋晴」より重く,「日本晴」程度である。  若干腹白を生ずるが心白ごく少なく光沢があり玄米品質は「日本晴」「キンパ」に比しそん色ない。搗精歩合は「日本晴」「キンパ」程度で高く胚芽脱落性も「キンパ」より落ちやすいようで「日本晴」程度である。食味も「ヤマホウシ」「中生新千本」「ニホンマサリ」に優り「キンパ」「日本晴」に比してもやや優る。


生態的特性
 出穂ならびに成熟期は「日本晴」「秋晴」「ヤマホウシ」よりやや早く「キンパ」程度か僅かに晩い育成地では晩生に属する粳種である。
 稈の太さは中太で耐倒伏性は「ヤマホウシ」に比し強く「日本晴」「キンパ」程度である。
 いもち病抵抗性遺伝子はPi-ta2をもつと推定され,葉,穂いもち病ともに「キンパ」「日本晴」「ニホンマサリ」「ヤマホウシ」等より強く「PiNo.4」類似の抵抗性を示す。圃場抵抗性はP-2b菌に対する発病程度から「農林22号」「アキジ」程度と推定されるが,分離比による検定では「日本晴」に比して明らかに強いが「ホウネンワセ」程度と推定されるので中程度と判断される。白葉枯病抵抗性は「ヤマホウシ」「ヤマビコ」「金南風」等より強いが「日本晴」よりやや弱く中~中弱である。縞葉枯病抵抗性は「日本晴」程度と推定され弱に属する。ゴマ葉枯病の発病程度は「日本晴」「キンパ」に比し少ないようである。赤枯病抵抗性は「日本晴」「ニホンマサリ」より強く「ヤマホウシ」程度と推定される。カラバエ耐虫性はやや強で,穂発芽性は易である。
 収量性は「ヤマホウシ」「秋晴」より高く「日本晴」「キンパ」に比してもやや高い。


岐阜県で奨励品種に採用する理由
 中生種に安定した品種がないため「ヤマホウシ」「日本晴」が山沿い中山間地の不適地にまで作付され,いもち病抵抗性,収量性が問題になっているので,これらに代え良質,安定品種として普及をはかる。


配付しうる種子量
 系統群採種 10.2kg
 普通採種   58.0kg
  計      68.2kg


適地および奨励品種採用予定県
(1)適地
  中部,近畿の中山間ならびに山沿い地帯に適する。
(2)奨励品種採用予定県
  岐阜県 普及見込面積  5,500ha
なお,三重県では昭和53年度より採用予定のもとに種子増殖準備中


栽培上の注意
 (1)一般にいもち病に強いが特殊ないもち病菌系には侵されるので適期防除につとめる。
 (2)白葉枯病,紋枯病にやや弱いので防除に留意する。
 (3)分けつ力がやや弱いので基肥をやや多めにし穂数の早期確保につとめる。
 (4)穂発芽性は易であるので適期刈取りに留意する。


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