序
 水稲の優良品種を育成せんが為本省においては昭和2年度より気候土質等により全国を8区に分ち、各区毎に1地方農事試験場を指定し経費の全額を交付して本省農事試験場を枢軸とし相互に密接なる連絡を保ちつつ試験を施行するの組織を採れり。即ち本省農事試験場においては多数品種に付き人工交配を行うと共に雑種初期世代の処理を行いその有望と認むる雑種を指定地方農事試験場に配付し、指定地方農事試験場においてはこれが地方的適応性の検定に関する試験を行いつつ固定を図り、かくして育成したる優良品種に対しては本省においてこれに新たなる品種名を付することとせり。
しかして本組織により育成せる優良新品種は既に38品種に及べり。
その内新潟県立農事試験場における本省指定水稲新品種育成試験地において昭和17年5月育成せる「水稲農林21号」の特性並び成績の概要に付きこれを印刷に付することとせり。
 
 昭和18年3月 農林省農政局


来歴並びに育成経過
 「水稲農林21号」は新潟県農事試験場における農林省指定水稲新品種育成試験において昭和6年「京旭」を母とし「水稲農林1号」を父として人工交配を行い、爾来選抜固定を図り育成せるものにして、昭和14年3月は「北陸23号」なる系統名をもって関係県及びその他の県にこれが種子を配付して地方的適否を確め、昭和17年5月「水稲農林21号」なる品種名を付せるものなり。


特性概要
 「水稲農林21号」は北陸地方における早生粳種にして、出穂期及び成熟期共に「農林1号」「銀坊主中生」の中間に位し、稈長中位、穂数多く、収量極めて多き品種なり。稲熱病に対する耐病性強きも稈やや弱し。粒形及び粒数大は中に属し品質良好なり。
 これが成績概要は次の如くにして、本成績並び関係県における試作成績より考察するに「水稲農林21号」は東北地方の平坦地帯の一部及び北陸地方の平坦地帯並び山間平地の一部に適するものと認む。


品質並びに食味調査成績
 品質調査は次表の如くにして「水稲農林21号」は概して「水稲農林1号」及び「銀坊主中生」に比して劣ることなく良好なるを認む。尚前記標準肥料栽培区における昭和16年産米につき「水稲農林1号」及び「銀坊主中生」に比較品種として供試し市販の3等白に相当せる程度に搗精して食味調査を行いたり。食味調査方法は供試米数量及び加水量を各異にし普通釜にて炊飯せるものを数回供試し十数人の試食によりて決定せるものにして「水稲農林21号」は「水稲農林1号」及び「銀坊主中生」に比し劣らざる概評を得たり。


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