| 来歴 |
| 北陸60号は、昭和21年新潟県農事試験場における農林省指定水稲新品種育成試験地において農林22号を母とし、北陸11号を父として人工交配を行い、以後は農林省長岡農事改良実験所、北陸農業試験場において選抜固定されたものである。 |
| 育成経過 |
| 世代別の選抜経過は下表の通りであって、昭和26年雑種第5代において収量試験番号833とし、各地における特性検定を行い、昭和28年北陸60号の系統名を付して、関係府県及びその他に配付して、その地方的適否並びに特性を検討中のものであって、昭和33年度は雑種第12代に当る。 |
| 形態的特性 |
| 北陸60号の稈長は新7号に比しほぼ等しく、ササシグレ、農林17号よりは短い。穂は比較3品種よりも明らかに長く、粒着は極めて密で、二次枝梗が多い。穂数は少なく、中間長穂の穂重型である。
稈は太い。 玄米の形状は中、大小は小で、比較品種の何れよりもやや小粒であり、玄米千粒重も軽い。 |
| 生態的特性 |
| 出穂期は新7号、ササシグレよりは1~2日早く、農林17号とはほぼ等しい。成熟期は新7号とはほぼ等しいが、農林17号よりは3~5日遅く、成熟日数のやや長い、早生種の晩に属する。
8時間照明による短日感光性は新7号よりやや低いが、農林41号とはほぼ同程度であり、24時間照明による長日感光性は新7号、農林41号よりも高く、感光性は早生としてはやや高いように思われる。 高温感温性は農林41号、新7号とは同程度のようであるが、高温短日感光性は農林41号、新7号の何れよりもやや低いと推定される。 下葉の枯上り並びに熟色は中位であって比較品種との間に顕著な差は認められない。稈の剛柔は剛であって倒伏には強いが、柔軟性に乏しいため挫折する恐れがある。 葉いもち病耐病性は比較品種より相当に強く中強である。穂種いもち病耐病性はササシグレより強いが、新7号、農林17号より弱くやや弱である。 胡麻葉枯病耐病性は農林17号より強く、新7号よりやや強く、ササシグレとは同程度である。根腐れ抵抗性は新7号とほぼ等しい。 小粒菌核病抵抗性は比較品種より弱く、紋枯病耐病性は新7号よりやや弱く、農林17号よりはやや強いように思われる。 稈蝿耐虫性は比較3品種よりやや強く、中強である。 耐冷性は冷水掛流しによる検定では新7号よりやや強いが、農林17号よりはやや弱く、生殖細胞形成期における低温処理による検定では、比較品種よりやや弱く、強いとは言い難い。 北陸60号は年により原因不明の不稔籾の発生が多く、また稔実歩合も比較3品種よりも低いが、1穂総粒数が著しく多いため稔実籾数は多い。 成熟期並びに刈取後の乾燥時にやや長期にわたる降雨に遭遇すれば穂発芽が多くなり、米質が劣悪化する場合がある。 標準、多肥、晩植のいずれの栽培条件下でも比較3品種より多収であり、北陸60号の生産力は相当に高いと言える。 心白、腹白の多少は、少~中であって、比較品種よりやや少なめで、品質も僅かに良いようであるが、良いとは言い難い。 以上の諸特性より北陸60号は多肥栽培に適し、北陸地域並びに東北南部の平坦部、中山間部等に広く適応すると思われる。 |
| 奨励品種に採用したい理由(石川県) |
| 昭和14年に「北陸14号」が奨励品種に採用されて以来、この品種の強稈、いもち病耐病性の強いこと、豊凶差が比較的少ないこと、環境条件に鈍感なこと等により、山間山麓地帯及びいもち病発生の恐れの大きい地域等にかなり普及した。
しかしながら、社会条件及び栽培条件の変化に伴なって、多肥料栽培による多収性が要求されてくると共に、「北陸14号」程度の強稈性及びいもち病耐病性では不充分となってきたことと、品質特に食味の上にかなりの難点があることによって、急激に栽培面積が減少してきた。 「北陸60号」は、昭和29年以来4ヶ年間の本場での試験及び昭和31年と32年の2ヶ年間の現地試験の結果、「北陸14号」の難点であった強稈性、いもち病耐病性及び耐肥性ははるかに強く、且つ米質、食味の点においてもやや良好性を示す様である。更に初期成育は旺盛であり、胡麻葉枯病耐病性も強く、紋枯病耐病性もかなりあり、下葉の枯上り少なく、葉傷みも少なく穂揃い及び熟色共に良好である。又、極めて太稈の割に二化螟虫害は少ないが、穂発芽性がある点が難点である。 本場試験及び現地試験の結果、収量性は極めて高く、且つ栽培条件による草型の変化が、他品種に比較して小さい点より、その作柄は安定していると考えられる。 従って「北陸14号」及び山間山麓地帯の「新6号」対照に奨励品種に採用したい |
| 普及奨励しようとする地域及び面積 |
| 「北陸60号」は、その特性及び試験成績より考察して、山間山麓地帯及びいもち病発生の恐れのある平坦半乾、半湿田地帯に普及奨励し、将来の普及面積は約3,000町歩である。 |
| 配付可能種子量 |
| 原種 1石8斗
採種 |
| 奨励品種より除外したい品種(新6号) |
| ●奨励品種より除外したい理由
昭和25年に奨励品種に採用されてから、主として山麓、中山間地帯及び胡麻葉枯病常発地帯に普及せられたが、昭和27、28年のいもち病大発生年次に、いもち病耐病性の弱点を曝露し、加うるに耐肥性の少ない点が原因となって、作付面積は余り伸びなかった。昭和30年に認定品種に採用された「越路早生」「奥羽255号」及び昭和32年に奨励品種に採用したい「北陸60号」は、その多収性、耐肥性、強稈性、いもち耐病性において「新6号」よりはるかに高く、その普及奨励対照地域は略々同一地域であるので、これらの品種の普及によって「新6号」の普及性は極めて少なくなるので奨励品種より除外する事が適当であると考えられ、昭和32年度をもって奨励品種より除外したい。 |
| 認定品種より除外したい品種(北陸14号) |
| ●認定品種より除外したい理由
昭和14年に奨励品種に採用されてから、山間山麓地帯及びいもち病発生の恐れの多い地域等にかなり普及して成果をあげたが、栽培方法の多肥化に伴ない、倒伏及びいもち病特に穂頚いもち病に難点が現れると共に、収量性が余り高くない点及び米質、食味の良好でない点が問題となり、作付面積は近年に至り急激に減少してきた。昭和32年に奨励品種に採用したい「北陸60号」、昭和30年に認定品種に採用した「越路早生」は多収性、耐肥性、強稈性、いもち病耐病性において「北陸14号」を上回り、その普及対称地域も、ほぼ同一であるので、これらの品種の普及によって「北陸14号」の普及性は極めて少なくなるので、奨励品種より除外する事が適当であると考えられ、昭和32年度をもって認定品種より除外したい。 |
| 栽培上の注意 |
| 1.多肥栽培に適する。
2.冷水掛り田には、なるべく栽培しないこと。 3.穂首いもち病の防除を励行すること。 4.刈取りは適期をのがさないこと。 5.地干しによる乾燥は好ましくない。 |
| 適地 |
| 北陸60号は、北陸並びに東北南部及びこれら地域と立地条件をほぼ等しくする地域に適し、また、寒冷地帯の早植栽培にも普及の見込あり。
石川県においては、県下一円の北陸14号、新6号等にかわるべき早生種として奨励品種に採用し、山形県においては、チヨウカイ、農林17号の中間品種とし、奨励品種に採用したい意向がある。 |
| 配付し得る種子量 |
| 当場 約2斗
石川県 原種 1石8斗 採種圃 |