来歴
 「北陸62号」は昭和21年新潟県農事試験場における農林省指定水稲新品種育成試験地において「農林22号」を母とし、「銀坊主中生」を父として人工交配を行い、以後は農林省長岡農事改良実験所、北陸農業試験場において選抜固定されたものである。


育成経過
 世代別の選抜経過は下表の通りであって、昭和26年雑種第5代において収量試験番号841とし、各地における特性検定を行い、昭和28年「北陸62号」の系統名を付して、関係府県及びその他に配付してその地方的適否並びに特性を検討中のものであって、昭和33年度は雑種第12代に当る。


形態的特性
 北陸62号の稈長、穂長はシロガネに比してやや長く、穂数はやや多く、やや長稈長穂の中間型である。
粒着粗密は白金よりは粗であるが中密である。
稈の細太は中であってシロガネよりやや細い。
玄米の形状は中長、大小は中小で、シロガネよりやや大であるが、千粒重はほぼ等しい。


生態的特性
 北陸62号の分けつ発生状況は本田初期はやや緩慢であって本田中期には中ないし中よりはやや多く、有効茎歩合はシロガネに比べてやや低い。
出穂期、成熟期は共にシロガネに比べてほぼ等しいか、1~2日程度遅く、農林43号に比べれば出穂期では3~4日、成熟期では3~8日早い中生種である。
8時間照明による短日感光性はやや高いが、シロガネ、農林43号とほぼ同程度であり、24時間照明による長日感光性もやや高く農林43号と同程度であるが、シロガネよりは高いようであり、感光性程度はやや高いと思われる。
高温感温性は農林43号、シロガネよりやや低いようであるが、高温短日感光性は農林43号よりやや高く、シロガネとほぼ等しいようである。
下葉の枯上りは比較2品種より頗る少なく、熟色も極めてよい。稈の剛柔は柔軟性に富み、長稈の割に倒伏も少なく、シロガネ程度であるが、挫折するようなことはない。
 葉稲熱病耐病性はシロガネ、農林43号とほぼ同程度か僅かに低く中位であり、穂首
稲熱病耐病性はシロガネよりやや弱く、農林43号よりはやや強く中~中弱である。
 胡麻葉枯病耐病性はシロガネとほぼ等しく、農林43号よりは僅かに劣るようであるが、根腐れ抵抗性はシロガネ、農林43号よりも僅かに強いように思われる。
 小粒菌核病、紋枯病抵抗性はシロガネよりはやや強く、農林43号とはほぼ同程度と思われるが、三者間の差は必ずしも明らかでない。
 北陸62号の稈蝿耐虫性は頗る強い。
 冷水掛流しによる耐冷性は、シロガネとほぼ等しいか僅かに強いようでもあるが不明である。
 標準栽培における収量はシロガネより僅かに多く、農林43号よりも僅かに多いかほぼ等しく、多肥栽培においてはシロガネよりも多いが、農林43号よりは劣る。しかし、晩植栽培での収量は比較2品種のいずれよりも多収である。
 玄米の心白、腹白は稀に生ずる程度であって、シロガネ、農林43号より少なく、品質も良好で、多肥、晩植の栽培条件によって、品質が劣悪化することも少ない。
 以上の諸特性より北陸62号は著しい多肥栽培に必ずしも好適するとは言い難いが、北陸地域の平坦部、中山間部、又はこれとほぼ類似した立地条件下の地帯、晩植栽培、秋落ち地帯等に広く適応し、特に稈蝿多発地帯には好適するものと推定される。


奨励品種に採用したい理由(石川県)
 昭和28年に「シロガネ」が奨励品種に採用されて以来、この品種の強稈性、稲熱病耐病性の強いこと、晩植及び湿田適応性が高いこと、耐肥性の高いこと、生産力の高いこと等により、平坦湿田地帯、山沿い地帯及び二毛作跡等にかなり急速に普及した。
 しかしながらその普及の速度が奨励品種採用当時に予想したものよりも下回っている現状である。この原因は稈蝿耐虫性が弱いこと、枝梗稲熱病耐病性が強くないこと、米質が良質といえないこと、紋枯病耐病性が充分でないこと、草状がズングリ型であること、穂首抽出度が少ないこと、変色籾が発生すること、熟色が良好でないこと、穂数がやや少ないこと等であると考えられる。従ってこれが改良を強く要望されていた。
「北陸62号」は、昭和29年以来4年間の本場試験と昭和30年以来3ヶ年の現地試験の結果、「シロガネ」の難点であった特性が何れも改良されており、特に草状、稈蝿耐虫性、熟色、米質においては顕著な差異が認められる。又、強稈性、耐肥性、湿田及び晩植適応性、収量性もかなり高い。
 従って「シロガネ」、「農林30号」対照に奨励品種に採用したい。


普及奨励しようとする地域及び面積
 「北陸62号」は、その特性及び試験成績より考察して、中生種栽培地帯の中で、稈蝿被害地域、比較的条件の良い湿田及び半湿田地域、紋枯発生地域等に普及奨励し、奨励の普及面積は、4000町歩である。


配付可能種子量
原種  2石3斗
採種


奨励品種編入理由(兵庫県)
 災害防止と営農面においてうこん錦より数日早い早生品種を強く要望されていたので、これに応じるため鋭意選出につとめていたが試験の結果「北陸62号」を優良系統と認めたので新たに奨励品種に加えんとす。


普及予定面積
4000町歩
a.内訳
 奨励品種以外の早生品種面積の中に割込み 2,980町歩
 (現在普通栽培用原種ではうこん錦が一番早い。しかしこれより早いものを望み、その他の品種で農林10号等を作っている。これらの面積に割込む予定面積)
 うこん錦(兵庫県奨励品種)の面積に割込んでゆく   500町歩
 近畿33号、早生朝日(兵庫県奨励品種)       420
b.地帯別
 北但地帯(豊岡市、城崎、出石、美方郡) 2000町歩
 南但地帯(養父、朝来郡) 400町歩
 丹波地帯(氷上、多紀郡) 1200町部
 播州山間部 400町歩


適地
 北陸62号は北陸並びに裏日本一帯及び東山地方、特に稈蝿多発地帯に好適するものと思われる。
石川県においては県下一円の中生種として、シロガネ、ヤチコガネにかわるべきものとして奨励品種に採用し、兵庫県においては、裏日本及び山間地帯の災害回避用の早生種として奨励品種に採用した。
富山県及び長野県においては昭和33年度に現地試験の規模を拡大強化して、その適地を明らかにした上に奨励品種に採用したい意向である。

 配付し得る種子量
  当場  約3斗
  石川県 原種2石3斗  採種圃 4280kg
  兵庫県 約1石


戻る   トップページへ

(c)著作権 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究部門 イネ品種データベース検索システム