| 北陸84号の特記すべき特徴 |
| 北陸84号はフジミノリに比べて極めて稈長が短かく,草型良好で倒伏はかなり強い。稈長,穂長はレイメイ並で,穂数はやや多く,収量性は高い。品質,とくに食味が優れている。 |
| 鳥取県で奨励品種に採用する理由 |
| フジミノリ, レイメイなどは鳥取県で中山間部から山間高冷地向の品種として,強稈で耐病性が強く安定した多収を示していたが,産米改善が強く要望されるにいたり,奨励品種から除外された。
北陸84号はフジミノリなどより若干出穂期が遅く,そのために障害型冷害を回避できるとともに,短稈で稈質良く,籾数の確保は極めて容易で収量性はフジミノリ並かやや優り食味,品質がすぐれているので,本県の水稲極早生種として成果が期待される。 |
| 普及見込地帯 |
| 鳥取県の中山間部から山間部にかけての地力中庸ないし肥沃な水田に適すると思われる。 |
| 育成経過 |
| 「北陸84号」は, 昭和35年北陸農業試験場において, 「コシヒカリ」を母とし, 「タレホナミ」を父として人工交配をおこない, その後系統育種法により選抜固定をはかり, 昭和40年「収1507」として生産力検定試験, 特性検定試験に, また昭和41年には系統適応性検定試験に供試した。その結果成績優良と認められたので, 昭和42年「北陸84号」の系統名を付し, 関係各府県に配付して地方適否を検討してきたもので, 昭和47年度雑種第12代となる。
昭和47年より鳥取県において奨励品種に採用の予定である。 |
| 形態的特性 |
| 苗は短かく,葉色が濃い。移植後の生育は中庸で,草状は葉身がやや短かく葉巾やや広く,葉色は濃い,分げつの開きは少なく,茎は太く,葉身は立ち草姿が良好である。
稈長はレイメイ並の短稈で,穂長は極めて長く,穂数はホウネンワセに比べてやや少ない中間型である。粒着はやや密で一穂籾数が多い。芒はなく,ふ先色は白で脱粒性難,玄米の粒形は中,千粒重はホウネンワセ並で,心白,腹白を稀に生じ,粒色はやや濃く,光沢があり,品質はホウネンワセ並かやや劣る程度である。 搗精歩合はホウネンワセと同程度である。 食味はホウネンワセにまさり,母本品種のコシヒカリに近く,良好である。 |
| 生態的特性 |
| 出穂期はホウネンワセ並で,成熟期は3~4日遅い早生に属する粳種である。稈は中太でやや剛く弾力性があり耐倒伏性はホウネンワセよりはるかに強く,標肥栽培ではフジミノリと同程度に強いが, 極多肥栽培では稈基部が脆く倒伏し易い。いもち病耐病性は抵抗性遺伝子Pi-iをもつと推定されるが,ホウネンワセに比べて葉いもち病は並~やや弱,穂いもち病は弱い。
しかし, 現地の成績によればフジミノリと同程度の強さを示している。白葉枯病には弱く, 紋枯病はホウネンワセより若干強く,やや弱の部類に属する。穂発芽性は難であり,耐冷性はやや弱と判定される。 収量性は籾数の確保が極めて容易であり,ホウネンワセよりかなり多収で,現地ではフジミノリよりも収量性が高い。 |
| 鳥取県において奨励品種採用の理由 |
| 鳥取県の山間部から山間高冷地の水稲奨励品種であるフジミノリは,早生強稈,耐病性に優れ,多収性をもつ安定した品種であって,本県の山間部の水稲作改善に尽した成果は多大なものである。しかしながら,消費動向の変化により,米質改善が強く要望されている現状で,フジミノリは米質,食味に難点があるので代替品種が強く要請されてきた。
北陸84号はフジミノリより若干出穂期は遅く,従って障害型冷害回避の利点があって現地の要望に添うものであり,短稈長穂で,稈質良く強稈性があり,収量性はフジミノリ並かやや優る多収系統であって, しかも米質,食味はフジミノリよりかなり優り,本県の水稲極早生種としての成果が期待される。 |
| 配付しうる種子量 |
| 系 統 採 種 800g
系 統 群 採 種 1,050g 普 通 採 種 60g |
| 適地および奨励品種採用予定県 |
| 1.適 地
東北南部,東海,山陰地方の中山間地帯に適するが,いもち病・白葉枯病の常発地には不向きである。 2.奨励品種採用予定県 鳥取県 普及見込面積 3,433ha |
| 栽培上の注意(鳥取県) |
| 肥沃田ではレイメイ以上の多収を示すが,1穂粒数が多く登熟歩合の低下を来たしすいので,施肥配分に留意する。本田での分けつは速かで有効茎歩合が高く,穂数の確保は容易であるので,山間部から山間高冷地の適応性は大きい。また,排水不良田での秋落はみられず,不良環境への適応性もある。葉いもち病抵抗性はフジミノリ並であるが,穂いもち病は同程度かやや劣るので防除に留意する。株の開きが少く,紋枯病の進行が速いので防除の徹底を図ることが必要である。登熟期に稈基部が脆弱化し,極多肥の条件では倒伏の危険性がある。耐冷水性はヨネシロ並かやや強いので現地での支障はないとみられる。 |
| 栽培上の注意 |
| 1) 短苗であるので,苗代日数を長くする。
2) 1穂籾数が多いので,籾数過多にならないように注意し,早期の穂肥を控える。 5) 病害防除に留意する。 4) かなり強稈ではあるが,極端な多肥栽培では稈基部が脆くなり易いので注意する。 |