北陸90号の特記すべき特徴
 日本晴より5日早く,強稈で良質良食味, 枯上り少く登熟極めて良好で胡麻葉枯病にも強い。


栃木県、神奈川県で奨励品種に採用する理由
 栃木県では日本晴,ヨモマサリ,クサブエその他の品種に代える。
 神奈川県では日本晴,ツクバニシキ,サチワタリその他の品種に代える。


普及見込地帯(栃木県)
 山間高冷地帯を除く平坦地帯


普及見込地帯(神奈川県)
 多摩川,鶴見川および横浜丘陵地帯,相模川流域および酒勾川流域地帯,相模原高台および中部山間山麓地帯に普及が期待される。


育成経過
 「北陸90号」は,昭和35年北陸農業試験場において「マンリョウ」を母とし,「コシヒカリ」を父として人工交配をおこない,その後系統育種法により選抜固定をはかり,昭和40年「収1532」として生産力検定試験, 特性検定試験に,また昭和42年より系統適応性検定試験に供試してきた。その結果成績優良と認められたので,昭和44年「北陸90号」の系統名を付し,関係各府県に配布して地方適否を検討してきたもので,昭和49年度雑種第14代である。
 昭和49年より栃木県および神奈川県において奨励品種に採用の予定である。


形態的特性
 苗丈は短かく,葉色濃く,初期生育は緩慢なほうである。草姿は葉身が短かく直立し良好である。稈長はマンリョウ並の中長稈で,穂長は日本晴よりやや短かく,穂数はマンリョウより多い偏穂数型である。粒着密度は中で1穂籾数はやや少ない。短~中芒が稀にあり,ふ先色は白, 脱粒性は難。
 玄米の粒形は中,千粒重はマンリョウよりやや小さい。心白はなく腹白は極く少ない。粒色は淡い飴色を呈し光沢に富み,品質は極めて良好である。搗精歩留はマンリョウと同じで,搗き上りが速い。食味はマンリョウ・日本晴よりはるかに良く,ホウネソワセに比べても明らかに良好である。


生態的特性
 出穂期は日本晴より5日位早くマンリョウ並で北陸地方では晩生に属する粳種である。
 稈の太さは中でやや剛,弾力性があり,耐倒伏性はマンリョクよりはるかに強く,日本晴と同程度かやや強い。生育後期には枯れ上りが少く,秋まさり型で熟色がよい。登熟性はマンリョウよりはるかに良く,日本晴に比べて良好であり,とくに多肥条件でもその低下が少ない。
 いもち病耐病性は葉・穂ともにマンリョウより強く,日本晴に比べて穂いもち病は同程度の中位であるが葉いもち病はやや劣る。白葉枯病は中。紋枯病,胡麻葉枯病, 縞葉枯病は日本晴より強く,秋落田, 半湿田などの不良環境における障害が少なく,二毛作にも適性がみられる。穂発芽は日本晴と同程度のやや易である。
 収量性はマンリョウ,日本晴並であるが少肥栽培などでは籾数確保がむづかしく少収になる傾向がある。しかし機械田植などによる密植栽培, あるいは多肥栽培でほ多収が得られる。


栃木県において奨励品種採用の理由
 栃木県における基幹品種はコシヒカリ45%,日本晴37%の2品種であり合計作付面積比率は82%に達している。
 日本晴は中生種として県内平坦部一円に栽培されているが,とくに県中北部では年により秋冷のため登熟不良となりやすいので,やや早い中生種の要望が強い。
 また日本晴は浅耕土田,秋落田, 半湿田などにおける胡麻葉枯病の発生が多く,二毛作地帯では縞葉枯病の発病が問題になっている。
 日本晴はまた, 品質食味などの点で劣るために, 現在では仕分品種にとどまっているが,コシヒカリと並んで本県の基幹品種はすべて銘柄品種に格上げしていくことが強い要望となっている。北陸90号は収量性もあり, 日本晴に比べて食味・品質がすぐれているばかりでなく,出穂・成熟期が早いので県中北部における秋冷回避など栽培の安定度が高まる。また本県では田植機栽培が50%も占めている状況で,北陸90号は日本晴と同様に機械化適応性が高いという有利性がみられる。
 胡麻葉枯病, 縞葉枯病についても日本晴より強いため不良環境田, 二毛作地帯に適応している。いもち病耐病性についてはとくに強くはないが実際栽培上殆んど問題はない。
 以上の点からみて日本晴に比べてかなりの有利性が認められることからその1部置換が見込まれる。その他ヨモマサリなどの品質食味に難点のある品種の1部およびいもち病耐病性が弱いために作付面積の減少傾向にあるクサブエの全面積置換するなど,本県の全作付面積97,000haの約1割の普及面積が見込まれており,北陸90号は本県の産米改善に果す役割は大きいものと期待される。


神奈川県において奨励品種採用の理由
 神奈川県においては日本晴は強稈,耐病,良質品種として昭和42年から奨励品種に採用された。その安定性と機械化栽培適性にすぐれたため,急速に県下に普及し,昭和46年には作付面積の50%を超えるに至った。しかしながら消費流通の面から,食味改善が要求され, 昭和45年代替品種として食味の優るツクバニシキを奨励品種としたが,縞葉枯耐病性および玄米粒色など外観にやや難点が認められ,これに代る良質品種が強く要請されている現状にある。
 北陸90号は熟期が日本晴よりやや早く,クサブエ程度。稈長は日本晴よりやや長いが稈は強剛で倒伏に強く,耐病虫性は日本晴と同程度で強い。収量性はほぼ日本晴程度で,田植機栽培など穂数の確保しやすい栽培法では日本晴に優る成績を示す。粒色透明でツクバニシキより品質良好,炊飯も粘りがあり食味は日本晴にあきらかに優る。したがって北陸90号は良質,良食味品種として将来性が期待される。


配付しうる種子量
 系統採種       700g
 系統群採種      2.4kg
 普通採種       60kg


栽培適地および奨励品種採用予定県
A 適地
 北陸,関東,以西の山間地帯を除く平坦地帯に適する。
B 奨励品種採用予定県
 栃木県     普及見込面積     10,190ha
 神奈川県      〃           2,334ha
 合計        〃           12,524ha


栽培上の注意(栃木県)
 安定多収を得るためには密植, 施肥配分に留意し,穂数確保につとめる。いもち病耐病性が日本晴に比較してやや弱いので,常発地の作付,防除に留意する。


栽培上の注意(神奈川県)
 強稈であるがやや少けつで穂数が不足するので,栽植密度を高めて穂数確保につとめる。また,倒伏に強く多肥栽培向と考えられるが,稈がやや伸びるので極端な多肥は避け,穂肥を利用するなど籾数の増加につとめること。なお現在は殆んど発生をみていないが, いもち耐病性は日本晴よりやや劣るので常発地帯での栽培には注意を要する。


栽培上の注意
1. 初期生育の旺盛化,1穂籾数の確保等に留意する。
2. 強稈であるが極多肥栽培では稈が伸び過ぎるので注意する。
3. 秋まさり型で枯上り少く葉色,熟色は極めて良好なので刈取適期を失しなわないこと。
4. いもち病防除に留意する。


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