| 序 |
水稲の優良新品種を育成せんが為、本省においては昭和2年度より気候・土質等により全国を8区に分ち、各区毎に1地方農事試験場を指定し経費の全額を交付して本省農事試験場を枢軸とし相互に密接なる連絡を保ちつつ試験を施行するの組織を採れり。即ち本省農事試験場においては多数品種に付き人工交配を行うと共に雑種初期世代の処理を行いその有望と認むる雑種を指定地方農事試験場に配付し、指定地方農事試験場においてはこれが地方的適応性の検定に関する試験を行いつつ固定を図り、かくして育成したる品種中特に優良なるものに付ては本省においてこれに新たなる品種名を付することとせり。しかして本組織により育成せる優良新品種は既に10品種に及べるも、本年2月更に兵庫県農事試験場における本省指定水稲新品種育成試験地において「水稲農林6号」の育成を見たるをもって、茲にその特性並び成績の概要を印刷に付すこととせり。
昭和11年5月 農林省農務局 |
| 来歴並び育成経過 |
「水稲農林6号」は農林省農事試験場において大正14年「上州」を母とし「撰一」を父として交配を行い、昭和3年兵庫県立農事試験場における農林省指定水稲新品種育成試験供試材料としてその雑種第3代種子の配付を受け爾來当場において選抜固定せるものにして、昭和8年4月「近畿9号」と命名し、関係府県及びその他の県にこれが種子を配付して地方的適否を確め、昭和11年2月「水稲農林6号」なる品種名を付せるものなり。
これが育成経過概要次の如し。 |
| 特性 |
「水稲農林6号」は早生粳種にして稈長中位、穂はやや短く、分蘖多く、稲熱病に対する抵抗性特に強し。玄米は小粒にして形状長味を帯び、収量多く品質特に良好なり。
特性の概要は左表の如くなるが、後に記載せる関係府県における試作成績より考察するに、本品種は主として近畿、中国、四国地方の山間部及びこれに近き地帯に好適するものの如し。 |
| 食味 |
| 食味は各人の嗜好により異なるべきも、普通肥料栽培における収量調査区の昭和8年及び昭和9年産米を同一方法により搗精せる精米につき、2ヶ年に亘り十数人にて数回試食せる結果「水稲農林6号」は食味佳良にして「早生朝日」と大差なく「銀坊主」に比し優るの概評を得たり。 |

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