南海102号の特記すべき特徴
 中生で極良食味である。


奨励品種に採用する理由
 福岡・佐賀・熊本3県の中晩生種には食味Aランクの品種がなく、自主流通ペースにのる極良食味品種が要望されている。平坦部に「コシヒカリ」等が導入されているが倒伏・熟期問題で極めて困難な状況にあるため、これらより栽培特性のよい「南海102号」の普及を図りたい。

福岡県: 中生品種「あそみのり」、「碧風」は流通評価が低く、中生の晩の「ツクシホマレ」も食味が十分とはいえない。一方、「ミネアサヒ」「コシヒカリ」は極早生で、稲麦二毛作地帯は不適である。
「南海102号」は中生で「コシヒカリ」並の極良食味であるため、平坦地及び山麓地の稲麦二毛作地帯の「あそみのり」、「碧風」の全部と「ツクシホマレ」の一部にかえて奨励品種に採用したい。 
       
佐賀県: 佐賀県はうるちの自主流通米比率が20%と低い。山麓および平坦部の早・中生の主力品種の「黄金晴」「碧風」は流通評価が思わしくなく、減少している。「南海102号」は「コシヒカリ」並の極良食味であるため、平坦部から山麓部における「碧風」の全部と「黄金晴」の大部分、レイホウ」の一部にかえて奨励品種に採用したい。

熊本県: 2類銘柄の「ミナミニシキ」は県全体で53%ときわめて高い普及率となっている。しかし、昭和61年に籾枯細菌病多発に起因する品質低下のため、売却不振銘柄の評価がなされるにいたった。
そのため、熊本県産米の声価を高めるための極良食味品種が強く望まれた。
「南海102号」は、「コシヒカリ」と同程度の極良食味であるため、山麓準平担及び中山間地域の「コガネマサリ」、「シンレイ」の全部と、「ミナミニシキ」等の一部にかえて奨励品種に採用したい。


普及見込地帯(福岡県)
 主として、一般平坦地、平坦肥沃地及び山麓地の稲麦二毛作地帯を中心に、あそみのり、碧風のすべて、ツクシホマレの作付が集中している地帯の一部にかえて普及させたい。


普及見込地帯および普及見込み面積(佐賀県)
 県下全域の平坦上部から山麓部および平坦部の一部 5,000ha


普及見込み地帯および対象品種(熊本県)
 山麓準平坦地域及び中山間地域のミナミニシキ、コガネマサリ等を対象に、良食味の銘柄品種として、普及したい。


来歴
 「南海102号」は、昭和54年宮崎県総合農業試験場において、コシヒカリの食味導入を目標に、「愛知40号(黄金晴)」を母に、「コシヒカリ」を父として、人工交配を行なった組合せに由来する。
 同年にF1を養成、翌年にF2~F3を簡易ハウス内密播栽培で世代を促進し、56年F4は圃場で集団栽培して長稈個体を廃棄し、57年F5で穂別系統として選抜を行なった。その際ビーカー炊飯米光沢検定法を用いコシヒカリ並の光沢の個体を選抜、以後系統育種法により選抜固定を図ってきた。
 昭和59年F7より「み系451」の名で、生産力検定試験、特性検定試験、60年F8より系統適応性検定試験に供試し、昭和61年F9より「南海102号」の地方系統名を付し、関係県に配付して地方適応性を検討してきたもので、平成元年度F12である。


形態的特性
 稈長はコガネマサリよりやや短く、穂長はやや短く、穂数はやや多い、やや長稈偏穂重型である。葉巾は中位、葉色は中で、止葉はやや立つ。粒着密度はやや密で短芒が稀にある。
ふ先色は黄白、脱粒性は難である。玄米の形状は中で粒大はコガネマサリと同じやや小粒である。腹白・心白の発生は少なく、色沢はやや濃、光沢はやや大で、外観品質はコガネマサリ並の良質である。搗精歩留は普通で、食味はコシヒカリ並の極良食味である。


生態的特性
 出穂期・成熟期ともコガネマサリより1日遅い暖地では中生の中に属する粳種である。耐倒伏性はコガネマサリ程度のやや弱である。収量性はコガネマサリ並である。
 いもち病抵抗性遺伝子型はPi-a、Pi-iと推定され、葉いもち、穂いもちの抵抗性は黄金晴並のやや弱である。白葉枯病抵抗性品種群は金南風群に属し、圃場抵抗性はコガネマサリよりやや弱い、やや弱である。縞葉枯病にはコガネマサリ同様罹病性である。


福岡県で奨励品種に採用しようとする理由
 現在、中生の奨励品種としては、中生の早の「あそみのり」(366ha)、「碧風」(2,554ha)、「ヨカミノリ」(176ha)と中生の晩の「ツクシホマレ」(13,628ha)が作付されている。
 「あそみのり」は見かけの品質が不安定であり、「碧風」は年次により胴割米が発生し易い欠点がある。「ツクシホマレ」は従来、同熟の中生の晩の主力品種であった「ニシホマレ」に比較すると食味がかなり改善されているが、消費者の嗜好は近年高レベルとなり、さらに良食味品種が要望されている。また、早生の「黄金晴」も消費者の嗜好には不充分である。
 福岡県の良食味品種として、極早生のミネアサヒ、コシヒカリがあり、増加しつつあるが、稲麦二毛作地帯には不適である。このため、稲麦二毛作地帯に適する中生の良食味品種が強く要望されていた。
 「南海102号」は「碧風」より2日程度遅い中生の早で、食味が「コシヒカリ」と同等の極良食味である。碧風に比べて耐倒伏性が劣るが、現地試験の結果から安定した作柄を得ているため、今後、福岡県の中生の主力品種とすることにより県産米の品質向上が期待できる。このため平坦地及び山麓地の稲麦二毛作地帯の「あそみのり」、「碧風」の全部と「ツクシホマレ」等の一部に替えて、奨励品種に採用したい。


佐賀県で奨励品種に採用しようとする理由
 近年、米の流通面では消費の変化に対応すべく自主流通米の比率拡大がつよく望まれている。しかし、現在本県の食用うるち米の自主流通米比率は20%程度で、他県に比べて極めて低い。
 本県の自主流通米となる品種は主に極早生の「コシヒカリ」と早生の「日本晴」であり、本県の平坦部の主要品種である「黄金晴」「碧風」「レイホウ」は、ほとんどが政府米としての流通である。しかも、「黄金晴」「碧風」については、流通の評価が思わしくなく作付面積は減少している。このような状況のなかで、今後自主流通米比率を60%程度まで引き上げるためには「コシヒカリ」並の良食味で、しかも、本県の主力となる中晩生品種の導入が要望される。
 「南海102号」は、「碧風」より3~5日程遅い熟期の中生で、収量性は「レイホウ」よりやや低いが、「碧風」並で、外観品質は「レイホウ」よりやや良く「碧風」並である。
食味は「碧風」「日本晴」より明らかに優れ「コシヒカリ」並の極良食味である。耐倒伏性は「碧風」「レイホウ」より弱い。いもち病、白葉枯病に対してはやや弱である。
 以上のように「南海102号」は耐倒伏性、耐病性にやや問題があるものの、極良食味であることから自主流通米としての需要が見込まれる。
 よって、「南海102号」は平坦上部を中心とする平坦部から山麓部における「碧風」の全部と「黄金晴」の大部分、「レイホウ」の一部に代わる品種として普及が見込まれるので奨励品種に採用したい。


熊本県で奨励品種に採用しようとする理由
 昭和50年に奨励品種に採用した「ミナミニシキ」は2類銘柄でしかも栽培しやすいことから、県全体で53%、山麓準平坦地域で75%、平坦地域で77%と極めて高い普及率となっている。
 しかし、過度の作付集中による刈遅れと、昭和61年における籾枯細菌病の多発と、これに起因する茶米、腹白米、乳白米等による品質の低下が契機となり、売却不振銘柄と評価されるにいたった。一方、「コガネマサリ」は良質であるが、2類以上の評価は期待できない。
 そのため、本県産米の声価を高める良食味品種が強く望まれた。
 「南海102号」は「コガネマサリ」と同程度の中生で耐倒伏性は「コガネマサリ」とほぼ同程度である。いもち病、白葉枯病にはやや問題があるが、食味が「コガネマサリ」より良く、「コシヒカリ」並の極良食味であるため、自主流通米産地における良食味の銘柄品種として普及が期待される。
 以上のことから、山麓準平坦地域及び中山間地域の「コガネマサリ」、「シンレイ」の全部と「ミナミニシキ」、「レイホウ」、「黄金晴」等の一部に替えて奨励品種に採用したい。


配付しうる種子量
 系統採種      5kg
 普通採種    100kg
 計       105kg


栽培適地および奨励品種採用予定県
1.適  地
 暖地、温暖地西部のいもち病常発地及び山間地を除く全域
2.奨励品種採用予定県及び普及見込面積
 福岡県:  8,500ha
 佐賀県:  5,000ha
 熊本県: 10,000ha


栽培上の注意
1. いもち病にはやや弱いので常発地での栽培はさけるとともに、その他の地域にあっても、いもち病に対する適期防除に留意する。
2. 耐倒伏性がやや弱いので、基肥を減らし、穂肥の時期に注意する等肥培管理に留意する。
3. 白葉枯病にやや弱いので適期防除に留意する。
4. 良質米生産を図るため適期収穫を励行する。


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