| 西海糯129号の特記すべき特徴 |
| ふ色とふ先色が明瞭な紫褐色であり糯粳の判別が容易であり、糯の純度を高めて、商品性の向上に好都合である。
西南暖地、特に九州・四国地方にかけて、糯としての広い適応性をもち、実用的諸形質もかなり整っている。 |
| 福岡・長崎・香川・愛媛県で奨励品種または準奨励品種に採用する理由 |
| 1) 福岡県では備南糯に代わる早生、有色、強稈、良質の糯品種として。
2) 長崎県では、これまで県北、壱岐、対馬などの早生種地帯向の早熟の適品種がなかったため。 3) 香川県ではヤシロモチの長稈で倒伏に弱い点の対策として。 4) 愛媛県ではタカサゴモチとナンゴクモチが白ふで早生と極晩生に偏し、中生がないこと、また来歴不明の赤糯増加の対策として。 |
| 普及見込地帯および面積(福岡県) |
| 1. 普及見込地帯
中山間・山ろく地及び地力中庸以下の平坦地 2. 対象品種 「備南糯」、「農林糯5号」およびその他早生品種 3. 普及見込み面積(ha) 昭和51年度で約800haが見込まれる。 |
| 普及見込地帯および面積(長崎県) |
| 1. 普及見込地帯
松浦市、世知原町、佐世保市等県北地域の早生種の栽培されている地帯。波汲佐見町、大村市、東彼杵町等県東部ならびに西彼町、西海町等西彼地域の早生種の栽培されている地帯。壱岐、対馬などの早生地帯を中心とするが、県東南部でも山ろくならびに平坦部の肥沃地以外の地域には普及が見込まれる。 2. 対象品種 備南糯、神力糯、農林糯5号、コトブキモチ、マンゲツモチ等奨励品種以外の糯種を対象とし、やせ地や中山間地帯不適地に栽培されている一部のアカネモチを対象とする。 3. 普及見込み面積 県北早生地帯250ha、県東南部早生地帯150ha、下五島・壱岐・対馬250ha・西彼杵その他100ha、合計約750ha。 |
| 普及見込地帯および面積(香川県) |
| 1. 普及見込地帯
香川県内の平坦、中間、山間および海岸島の全域に普及が見込まれる。 2. 対象品種 ヤシロモチ 3. 普及見込面積 香川県内における昭和48年度の糯の作付面積は1,080haであるが今後約1,400haの普及が見込まれる。 |
| 普及見込地帯および面積(愛媛県) |
| 1. 普及見込地帯
山間高冷地を除き、平たん地から中山間地城に普及が見込まれる。 2. 対象品種 赤糯、タカサゴモチ、ナンゴクモチ、コトブキモチ、 3. 普及見込面積 愛媛県における昭和48年度の糯の作付面積1,151haであるが、今後約700haの普及が見込まれる。 |
| 育成経過 |
| 西海糯129号は昭和38年、農林省九州農業試験場において、「ホクヨク×祝糯」のF1を母とし、「コシヒカリ」を父として人工交配を行ない、その後も同場において世代促進法を適用しながら、集団育種法により育成されたものである。
この間、昭和38年度には春季に母体の「ホウヨク×祝糯」の交配、秋季に三系交配、冬季にFlが養成され、同39年には春季にF2、秋季にF3集団が温室で栽培された。さらに40年度には春季にF4、夏季にF5、秋季にF6集団が温室で栽培された。41年度以降はほ場の普通期栽培に移し、41年(F7)に個体選抜、42年(F8)に固定度検定がなされ、43年(F9)より生産力ならびに特性検定、44年度より系統適応性検定試験が開始された。その結果、成績良好であり、昭和45年(F11)より「西海糯129号」の系統名で関係府県に配付して奨励品種決定調査に供されたもので、昭和49年F15にあたる。 この系統は昭和49年度より福岡準奨励品種に、長崎、香川、愛媛の3県で奨励品種に採用しようとするものである。 |
| 形態的特性 |
| 備南糯に比べ、稈長は約10cm短く、穂長も僅かに短いが、穂数の多い、やや短稈穂数型の糯種である。無芒でふ先色は紫褐色、ふ色も紫褐色である。
粒着密度は中位で、脱粒性はやや易である。玄米の形状は中形で、粒の大きさは中の小で、乳白色を呈し、品質・食味ともに良好である。玄米千粒重は備南糯より僅かに軽く、草状は良好で、止葉はやや直立し、熟色はかなり良い。 ふ色が褐色であるため、立毛中に粳の機械的混入株や糯・粳間の自然交雑株を除くことが容易であり、糯粒の純度を高めるのに好都合である。 |
| 生態的特性 |
| 出穂.成熟期は備南糯より3~4日早く、粳の全南風と同程度でヤシロモチより1~2日おそく、九州北半では早生の晩に属する。やや短稈のため、倒伏にはかなり強く、肥よく地を除けば十分である。
白葉枯病には強く、アカネモチと同程度であり、備南糯、ヤシロモチにまさる。葉いもち病にはやや弱で、ヤシロモチに劣るが、備南糯・アカネモチにややまさる。 穂首いもち病と紋枯病に対しては中位であり萎縮病には弱い。生産力は糯の早生種としては高く、熟期や草状の点から西日本で広い適応性をもっている。 |
| 福岡県において準奨励品種採用の理由 |
| 現在もちの奨励品種として「ナンゴクモチ」(一般平坦地向)、準奨励品種として「ヒヨクモチ」(平坦肥よく地向)、「備南糯」(山ろく地及び地力中庸以下の平坦地向)の3品種が推奨されているが、いずれも中・晩生種で、中山間・山ろく地に適する早生種がなく、雑多な品種が栽培されている。また、本県の主要品種で、もち作付面積の47%を占めている「備南糯」が、倒伏に極めて弱く、作柄も不安定なうえに、ふ色・ふ先色がなく、もちの識別が困難である等、「備南糯」に代わる早生・強稈・良質のもち品種が強く要望されている。
西海糯129号は早生の晩に属するもち種で、草状が良く、倒伏白葉枯病にもやや強く、早生種として多収である。また、ふ色、ふ先色を有し、異株の除去が容易である。玄米の品質は、粒ぞろい、光沢が良く、「ナンゴクモチ」、「ヒヨクモチ」、「備南糯」にまさり、もち質も、外観・ひきが良く、「備南糯」より良質である。 以上の特性から、「備南糯」に代わる早生品種として、準奨励品種に採用したい。 |
| 長崎県において奨励品種採用の理由 |
| 県北、県東部、壱岐および対馬等早生種地帯では早熟の適当を糯品種がなく、備南糯、神力糯、農林糯5号等晩生の品種が依然として栽培されている。これらの品種は熟期がおそすぎるばかりでなく、倒伏しやすいため,減収や品質の劣悪化をまねいている。また、ふ色がないか不明瞭で、うるち種との混合による品質の低下等が著しい。本県では47年よりアカネモチを奨励品種に採用普及しているが、上記地帯は不適地であり、普通期の糯の奨励品種はアカネモチだけであるため、早生の糯品種に対する要望が強い。西海糯129号は早生の晩であり、耐倒伏性も肥よく地を除けば十分で、早生地帯に好適する。
また、耐病性も比較的そろっており、収量も高く、品質食味も良好である。 |
| 香川県において奨励品種採用の理由 |
| 香川県で栽培されている水稲糯品種は中生種が主体であり、そのうちヤシロモチの作付等が56%を占めている。この品種は奨励品種採用後、10年を経過したが、県下全域で好適した作期をもち、豊凶差が少なく収量も比較的安定しているが、長稈で倒伏しやすいことが最大の欠点である。このため近年急速に普及している収穫機による省力機械化が困難である。
西海糯129号は熟期、耐病性、品質はヤシロモチとほとんど変らず、収量性はヤシロモチなみか、やや上廻る場合が多い。またとくに草状が良く強稈で耐倒伏性が勝り、機械化栽培に適している。 |
| 愛媛県において奨励品種採用の理由 |
| 1.愛媛県の奨励品種は早生のタカサゴモチと晩々生のナンゴクモチの2品種であるが熟期的に両極端であり、山間地と平坦地の晩生地域に二分して普及しており、県下全般に普及するものがなくナンゴクモチは平坦地でもなお熟期がおそすぎるきらいがある。
本県の気象条件に適合する中生品種で平坦地から中山間地にまで普及するような品種が望まれる。 2. タカサゴモチ、ナンゴクモチともに白ふで糯粳の判別がむずかしく、農家はもちろん、育苗センター、ライスセンターでも混種の原因になっており有色ふの糯品種の要望が高い。 有色ふ希望のため来歴不明の赤糯が県下に普及している。現在作付されている赤糯はいもち病耐病性餅質が良好であるが少収で倒伏し易い。西海糯129号の特性から見てこれに十分代り得るものと考えられる。 3. 西海糯129号は愛媛県では昭和45年から奨励品種決定調査で昭和47年から現地調査に供試した結果、強稈でいもち病、しらはがれ病に強くふ色は糯粳の判別がし易い褐色で、熟期も中生の晩でのナンゴクモチより早く、今後普及の増大がみられ、田植機栽培にも適応する。 |
| 配付しうる種子量 |
| 系統採種 5kg
系統群採種 20kg 普通採種 132kg |
| 適地および奨励品種採用予定県 |
| イ 適地
西海糯129号は昭和45年以降4カ年にわたって関係府県に配付し、地方的適否が検討されたが、西南暖地で広い適応性をしめし、なかでも福岡、長崎、熊本、大分、愛媛、香川、徳島、高知、静岡の各県ですぐれた成績をしめした。これらの各県では、特殊肥よく地と山間高冷地を除いて、一般平たん地帯から山麓・中山間地帯にかけて広く好適するものと思われる。本系統の最適地域は北九州・中九州・四国地方と推定される。 本系統は、ふ色とふ先色に明瞭な特徴があるため、刈取り前の立毛中に粳などの混入株を除去して糯の純度を高めて商品性の向上に役立ち、一般農家や育苗センター・ライスセンターなどで喜ばれ、今後普及の増大が期待される。 本系統の対象品種は、備南糯・農林糯5号・神力糯・コトブキモチ・マンゲツモチ・ヤシロモチ・赤糯(愛媛県)・タカサゴモチ・ナンゴクモチなどである。 ロ 採用予定県 奨励品種:長崎県(750ha)、香川県(1,400ha)、愛媛県(700ha) 準奨励品種:福岡県(800ha) なお熊本県でも有望品種として49年度から採種事業に移す予定である。(1,500ha) |
| 栽培上の注意 |
| 熟期の点で、九州・四国地方では標高400m以上の山間高冷地への導入は不適である。
短稈群のなかではやや稈が長い方であるので、かなりの倒伏性はあるが、特殊肥よく地や極端な多肥栽培はさけるべきである。 いもち病に対しては弱点があるので、常発地への導入はさけるようにし、窒素肥料の偏用や過多な施用をしないことが必要である。 萎縮病対策として、苗代末期や本田初期のツマグロヨコバイなどの媒介虫の駆除を励行するとともに、極端な早植をさけるように留意すべきである。 ふ色とふ先色が明瞭な紫褐色であることは、刈取り前の立毛中に異株を除くのに好都合であるので、これを励行して、糯としての純度を高めることは商品性の向上に寄与することが大きい。 |